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決壊 下巻

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決壊 下巻

決壊 下巻aws

カスタマーの評価:4.5/5
  • 著:平野 啓一郎
検索する >> 平野 啓一郎
製造・発売:新潮社
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形態:単行本
総ページ数:402
発売日:2008-06-26
[ 和書 ]
定価:¥ 1,890
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カスタマーレビュー

評価:4/52008-09-20  

難解ながら、文明批評小説の力作

吉田修一が『悪人』を書いたように、同じ純文学系の平野啓一郎が「殺人事件」をモチーフにした小説を書いた、というのでミステリーファンの私としては初めて彼の作品を手にとって読んでみた。しかし、ボリューム満点の本書は、いささか難解だった。

 上巻の終わりのほうになってやっと事件が起こる。2002年10月、全国各地で次々と男性のバラバラ死体が発見される。それぞれの遺体には社会からの“離脱”を呼びかける犯行声明が付けられていた。やがて被害者は宇部市に住む平凡な会社員と判明し、前代未聞の広域死体遺棄事件に発展する。

 京都府警の捜査本部は、被害者の兄のエリート国家公務員を容疑者として逮捕する。だが、彼は断じて口を割らない。やがて鳥取市で起きた少年犯罪から意外な犯人が浮上し、さらに東京で連続2件の爆弾テロ事件が勃発して、事件はまったく予想外の悲劇的・絶望的な結末を迎える。

 こうした社会派ミステリーの枠組みを縦軸に、作者はネット社会の闇、いじめ、不登校、ひきこもり、家族崩壊、報道被害といった現代の抱える社会問題を横軸として物語に取り込んでいる。そして各地の方言で語る個性的な登場人物たちが、生々しくも壮大な思想ドラマを展開する。

おりしも、東京・秋葉原の無差別殺人や八王子駅ビルの書店でのアルバイト女子学生殺人という衝撃的な事件が続けて起きた。犯人はいずれも「誰でもいいから殺したかった」と供述したという。いったいなぜ、こんな無気味な事件が続くのか。“通り魔”はどこから私たちのところへやってくるのか。
 本書は、現代社会が直面するこの難問に真正面から取り組んだ、文明批評小説の力作である。

(2人中、2人の方が「このレビューは参考になった」と投票しています。)


評価:3/52008-08-11  

返して!

想像はしていたけれど想像以上の暗黒世界を見てしまった。
筆者の筆はそれこそ悪魔のように冴え渡り、読み始めてしまった者を
捕まえて離さないだろう。

作中、被害者の家族が「生きて返して!」とテレビカメラに向かって叫び、
対して加害者は「返してって何?意味不明」というような反応をみせる。
読了後、そのエピソードがまず浮かんだ。
何故なら本書のために費やした時間とお金を返してとまず思ったからだ。
作者の技術にひれ伏した自分が恥ずかしくさえあった。
こんな読書体験は生まれて初めてだ。

難解であるが故、理解してみようと努力した。
しかし理解できなくていいと思う。
親しい人には絶対勧めない本であり、でも読んだ人と語ってみたい本だ。

(9人中、5人の方が「このレビューは参考になった」と投票しています。)


評価:5/52008-08-10  

罪、とは病気だろうか、人間社会の倫理観とは、そもそも人間の存在とは?

 著者の小説作品に私はずっと惹かれて読み続けて来ましたが、日蝕、の中世ヨーロッパ、葬送、の19世紀フランス、を何度か読み返した印象が強かった為か、現代日本を舞台にしたこの小説を読み始めた時、最初少し違和感を憶えました。登場人物達の細かな描写、何かが起こりそうな予感。・・・
 沢野崇、の(そして同時に著者の?)強烈な絶望感やニヒリズムは一体何なのだろうか、と読みながら何度も考えました。上巻の前半で展開される崇の独言に私は想わず興奮し”俺がこの俺の生の失敗を十分に知っていて、しかもそれに自ら決着をつけた証として”(上巻88ページ)のような言葉に惹かれている自分自身に想わず危険を感じたりしました。この絶望感を引きずったまま最後の衝撃的な絶望で終わってしまい、私は読後しばらく本当に気分が重かった。大江健三郎著「個人的な体験」のラストを連想し、大江氏は最後に絶望の中にも僅かながら希望の光を与えてくれたのに、でもこの著作にはそれがない。それでも最後までこの世界の生に踏みとどまって書き上げた著者の身を削る努力を想いました。
 事件のおぞましさ以上に、犯人の操る言葉のおぞましさが本当に恐ろしい。私たち人間が営む社会の常識や倫理観とは、一体何を基準にしていたんだっけ?と、一瞬途方に暮れ、身の危険を感じ、常識や倫理観が音を立てて壊れていくような恐怖を憶えるのでした。「人間とは単なるデータの束だ」(上巻266ページ)という言葉がありました。「罪」は病気に還元されてしまう、という発言もありました。”私と同じ脳神経回路を備えた人間が出現すれば、きっと私と同じ考え方をするだろう”という、かつて芥川賞選考委員を務められた故・日野啓三氏の言葉をも想い返し、唯物論か心神二元論か、という現代科学によってほぼ決着がつけられつつある、でも心情的には避けたいテーマに、私は突き当たってしまいました。

(6人中、4人の方が「このレビューは参考になった」と投票しています。)


評価:5/52008-07-29  

まさか読みきるとは

「小難しいことを書く人」というのが、著者の印象だったから、まず上巻だけを買い、読んでみることにした。途中から彼の印象は変わっていき、今までの印象は私自身のまったくの思い違い、思い込みだとわかった。それをはっきり知ったのが上巻のラスト、もう次を読まざるにいられない。
そこに書いてあるのは誰?てそれってわたしじゃないの?かとさえ思って、声を上げそうになった。それは死に対する恐怖、死にたくないという気持ちが強ければ強いほど、現世に執着してしまう。子供が生まれてからここ20年ばかり、いつもそういう気持ちを突きつけられてきた。それはわたしが幸福過ぎるから??教えてよ!と読み進んでいったら・・・
あれがわたしとは思いたくはないけど、そんな結末なんだ・・・
人生は一回きりだよね、リセットなんてできない・・・
だから今、今ある生を見つめて、執着や苦しみを引き剥がす練習を毎日しているんだ。
この本を今の時期に読んで、本当によかった。

(7人中、4人の方が「このレビューは参考になった」と投票しています。)


評価:5/52008-07-24  

嵐吹き荒れる

 凄まじいストーリーに驚いた。バイオレンスに葛藤、グチャグチャの精神状態に誰もが巻き込まれ、どんどんすさんでいく心。
 かなり重苦しいストーリーであるが、将来的にこのような事件が起こるとも限らない状況を考えると、リアリティに圧倒されて読みきってしまった。
 ドラマ化はできるが、映画化となるとR指定だろうな。

(7人中、4人の方が「このレビューは参考になった」と投票しています。)

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