印象に残る近刊
このページでは「カスタマーのおすすめ:印象に残る近刊」の中から【地の日 天の海 下 / 愛しの座敷わらし / さよなら渓谷 / 夜の桃 / アイスマン。ゆれる / 鼓笛隊の襲来 / 静かな爆弾 / Xωρα(ホーラ)―死都 / 窓の魚 / その時までサヨナラ / 少しだけ欠けた月―季節風*秋 / 戸村飯店青春100連発 / ステップ / 訣別の森 / 青春の十字架 / ジーン・ワルツ / 夜に目醒めよ / スメラギの国 / 羊の目 / 霧のソレア / 気をつけ、礼。 / 流星の絆 / モーニング Mourning / 東京島 / 荒野】を紹介しています。
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商品一覧
▲ 上下分冊。著者初の歴史小説は、驚く程、時代考証が緻密だ。非常に多くの資料を駆使し、信長、光秀、秀吉らの所業を、正確に描こうとしている。それらの人物に、ことごとく関わるのは、若い出家修行僧である随風(後の天海僧正)だ。この物々しい乱世の世を、著者は、学者肌的な、深い思慮をもって、冷静に描く。最新の研究成果も取り入れられて描かれ、我々の知っている歴史とは、少し異なる切り口であり、大変興味深い。
▲ 最後の一行には、思わず、にやっとしてしまった。著者により最近発表された作品「明日の記憶」や「千年樹」は、大変重いテーマを扱っているのに対し、本作品は、著者が本来得意とする、軽妙かつユーモアにあふれた文体で、ある種の幻想が、テンポ良く著されている。その内容は、本文中の言葉を引用すると、常識を疑い、固定観念を捨てろ、と要約する事が出来る。座敷わらしを通して、家族を描いた、大変充実した作品だ。
▲ こんな奇妙な関係があっても良い。世間の目とは、この様なものだとも思う。著者の最近の作品では、「悪人」では、人間の深い情念を描き、「静かな爆弾」では、ある種の幻想性が描かれた。本作品でも、心の奥底にあるものが、描かれている。それは、対内的な面と、対外的な面の、両面からである。最後の一行については、考えさせられる。予想される答えが、痛々しい。人間の内面に、深く迫る事の出来る作品だ。
▲ 恋愛、と言っても不倫であるが、それらと、ビジネスとのバランス感覚が問われている。この、なかなかリッチな主人公は、不倫に対しても、一定の価値観を構築している。あまり共感は出来ないが、この価値観の中で、物語が進行するのが、面白い。作風は、これまでの著者のそれとは、かなり異なるが、一種のイメチェンだ。ただ、希望を言えるとすれば、恋愛問題を重視するよりも、もう少し、企業小説的であって欲しかった。
▲ アイスマンとは、主人公の女性に与えられた、ニックネームだ。ファンタジックな話ではあるが、まじないにより、男女の恋を成就させたりする。テンポ良く読み進む事の出来る文体、そして、恋愛感情も絡んだ、楽しい内容。また、何より楽しみなのは、著者の作品の常である、意外な結末だ。本書には、友情や親子の情愛、恋愛などがぎっしりと詰まっている。それらは、終始、熊本を舞台に描かれる。余韻は、けっして悪くはない。
▲ 九篇の短編集。どの作品にも共通する、不思議な感覚がある。内容が著しく奇抜であり、当初は何の事か?と思わされるが、結局、描かれているものは、意識の欠落と要約出来る。戦後最大の鼓笛隊が襲来するから逃げる、小学校の運動場の真ん中に家が建っている、覆面をして出社しても良い事が、合法化された、などという内容で物語が始まる。そして、我々の意識の中の負の部分を描き上げる。新感覚の短編集として、珠玉だ。
▲ 音の無い世界の不思議さに酔える。公園での激しい喧噪と、満開の桜の美しさという、両極端のものが同居し得る、という幻想性がある。本書は少々難解だが、人の目的意識の脆弱性を描いている。我々の行動は、何らかの目的意識に、突き動かされて成され、それを遂行する過程で、目的意識が揺らぎ、いつしか、他の目的意識が成熟する。無音の世界の幻想の中で、人の心理のひたむきさを感じる。そして、出来るなら、春に住みたい。
▲ エーゲ海の小島にあるホーラは、過酷な歴史を背景とする「死都」だ。そこで繰り広げられる事象は、まるで幽霊話の様であり、現実と非現実の間を行き交う。それは妖艶怪奇で、妖しい雰囲気に、引き込まれそうになる。そして、歴史や宗教を背景に、現実的な考察を行う。そのスタンスは、宗教との弱い関わりを基本とする。著者の人生を見詰める眼は、ことさら深い。それは、あたかも、生よりも死に重点が置かれている様だ。
▲ 著者の、これまでの著者の作品は、少々ドタバタとした感があって、読み進むのが楽しかった。本作品は、二組のカップルが温泉旅行をするという、単純な筋書きで、楽しいというより、読み進むのが怖い。それぞれの登場人物の、どうしようもない孤独感が、しっとりと描かれている。その描写は、精緻かつ蜻蛉の様でもある。本作品には、これまでの著者のものには、あまり見られなかった、純文学テイストさへ感じる。
▲ 著者初の、家族の物語。物語は、多分にファンタジックだが、仕事と家庭とのバランスに関して、物語は多くの真理を語る。仕事を至上とする夫、仕事は生活の基盤であるのに、家庭生活に執着する妻、それから子。物語は、仕事ばかりに精を出しているお父さんにとっては、かなり耳が痛い。少々、平凡な印象もあるものの、なかなか感動的で、しみじみとした、多くの余韻を伴う。著者の、人生を見つめる眼は、確かだ。
▲ このシリーズ、春・夏・秋の順番で、出版されている。本書「秋」は、意識的に、少し感傷的な作品が、集められているのかも知れないが、ややインパクトが少ない。人が人を想い遣る、少し屈折した感情が、鮮やかに描かれてはいる。ただ、その感情に込められた情熱のボルテージが、十分に高いとは言えない。それ故に、結末が、少々平凡にも感じてしまう。気軽に、楽しく読めるが、著者独特の「泣かせ」の要素は少ない。
戸村飯店青春100連発
- 著:瀬尾 まいこ
- イラスト:小池アミイゴ
理論社
発売日:2008-03-20
¥ 1,575
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◆新品最安値:¥ 1,575
◇中古品最安値:¥ 700
▲ 大阪のド下町を舞台にした、兄弟の成長を描く、青春物語。大阪弁が多用され、いかにも、大阪のノリであるが、兄弟の、心理の、深い部分までも描く。物語は、軽妙なペーソスで、満たされている。しかし、単なる笑いではなく、この兄弟の心理的葛藤を、鮮やかに描いている。そして、表現がストレートで、文体に、独特の透明性を伴っている。兄弟そのものを描いた描いた作品として、極上の味わいがある。深く感銘を受けた。
▲ 主人公のこの男、各章の最後で、必ず死ぬ。死ぬのは、主人公のみならず、アウトローの人間達や刑事なども含む。ところが、主人公は、死ぬ時に何故か、一日だけタイムスリップし、過去に戻る。これが、幾度となく、繰り返される。物語を貫く、一本の筋がある。それを、主人公は、何度も死んで、同じ一日を、繰り返し体験する事で、真実に迫る。同じ日を繰り返す事によって、浮き彫りになる事柄も多い。本作品は、傑作だ。
▲ 江戸川乱歩賞受賞作。今回の作品は、ミステリーである前に、ロマンが溢れている。ロマンと言っても、恋愛というよりも、少年の様な心と使命感の方だ。東北海道の広大さをイメージさせられながらも、ヘリなどに関する、細緻でメカニカルな描写も秀逸。派手な序盤に加えて、小出しに示される伏線も、面白い。ただ、この作品は、万人受けするか? ヘリ、メカ、自衛隊、使命、といった事に、ピンとくる方には、オススメです。
▲ 主人公は、警視庁のSPだ。SPは、生命を賭して、内外の政府の要人らを警護する。警察官の中の精鋭でもある。SPが警護する対象は、政治家が多い。物語では、政治家の周囲の、不穏な動きが、大きな問題に、発展する。ところで、精神病院に関する記述で、終始間違っている部分がある。精神科の入院形態で、正しくは、主なものは、任意入院と、医療保護入院である。内容そのものは、非常に面白く、登山シーンも豊富だ。
▲ 著者の海堂先生は、臨床医だ。この暴露的内容には驚いた。海堂先生は、よくぞ、ここまで書かれたと思う。産科医療を、根本的にゆがめている実態の現実を、かなり正しく伝えてくれている暴露本的内容だ。物語の組み立ても面白い。代理母の問題を、少子化問題とも、からませて描かれている。この主人公は、産科医療の改革に対する、熱意は強いが、行動は大胆不敵だ。専門知識満載の、ノンフィクション的フィクションだ。
▲ 主要登場人物は、ほとんどが、在日コリアンの人々だ。中華料理店を拠点に、クラブ、カフェバー、不動産業などを経営している。しかし、皆が行き当たりばったりの生活をし、経営もかなり放漫なので、営業成績は、あまり芳しくない。そして、物語が中盤に差し掛かる頃から、大変スリリングな展開となり、手に汗握る。物語は、意外な方向に展開し、重苦しい雰囲気の中で、恋愛感情が芽生える。大人の余韻に、浸る事が出来る。
▲ 物語には、終始、たくさんの猫が登場する。構図は、猫VS人間であり、内容は、かなり壮絶だ。戦闘的場面は、あまりに壮絶過ぎて、本から眼をそむけたくなる程だ。加えて、人間の欲望の醜さが、鮮やかに描かれているが、悪いのは人間ばかりの様な気がしてくる。また、長編作品としての、バランスに、少々難があり、特に、前半は、緩慢な印象だ。後味は、あまり良くない。ただ、著者が、人生を見つめる眼は、鋭い。
▲ 主人公の出生は壮絶であるが、その後の、裏社会での生き様も、壮絶極まりない。物語は、重く、そして、寂しい。復讐という、裏社会の掟が、主人公を徹底的に支配する。しかしそれは、主人公が選んだ道ではない。むしろ、夜鷹である母が、一定の願いを込めて、ある選択をした。東京浅草寺の観音様が、主人公と対峙する場面がある。夜鷹だった母が、観音様の姿を借りて、何かを語りかけている様にも思える。複雑な余韻が、交錯する。
▲ 著者はパイロットか、もしくは、航空関係者なのだろうか? 飛行機に関する、詳細な知識満載で、しかも、この満身創痍のジャンボジェット機は、墜落寸前だ。それに追い打ちをかけるのが、何と、アメリカ政府だ。アメリカ、日本、朝鮮半島、ロシアなどの、軍事的思惑が渦巻いている。それが、全くのフィクションではなく、近年の軍事情勢を反映しているので、リアルこの上ない。一刻も早く、先を読み進みたくなる。
▲ 教師と生徒、および、その後が描かれている、六篇の短編集。厳しい現実が織り交ぜられながらも、温かい感性を伴って描かれている。最初に配されている「白髪のニール」が示唆する事は多い。何しろ、ロックはロール?らしい。五番目に配されている「泣くな赤鬼」は、涙無しでは読めない。表題作の「気をつけ、礼。」は、ごく短い作品だが、非常に秀逸だ。著者の描く少年は、あたかも、著者自身のかつてであるかの様だ。
▲ 本作品は、著者の作品群の中で、第一級の出来だ。兄弟妹の絆の深さをに、微笑ましさを感じるが、それにしても、この悪行は、、、と思ってしまう。しかし、息をつく暇も無い、テンポの良い展開で、終盤を迎える。そして、終盤での、どんでん返しの連続には驚いた。眼が涙で霞んで、文字が見えなくなった。また、終始引き合いに出されるのが、相当に美味い、ハヤシライスだ。涙で霞んだ眼で、ハヤシライスを食べたくなった。
▲ 5人全員が、1961年生まれで、かつて寝食を共にした、大学生時代の学友。その5人が4人となり、葬儀の帰途、4人が3人になるかも知れないという局面となってしまう。ここから、喪服での、ロングドライブが始まる。作品は、学生時代の、想い出話を、延々と語る。その内容は、単なる青春物語では終わらない、壮絶さがある。しみじみとした想い出話なのに、ハラハラとさせられる。男の友情とは、得てして、こういうものだ。
▲ 女性一人だけを含む、大勢の無人島への漂流者達の生活。この島は、当初は、世間とは、完全に隔絶されているのかと思えば、そうでは無い。一人、また一人と、裏切り者が出る毎に、島の状況が一変二変するが、その経緯が、大変面白い。そして、島の未来は、どんな風に変化してゆくのか? こんな興味を抱きながら読み進むと、意外な側面が多く、引き込まれる。著者独特の世界観で描かれるこの物語は、プロセスが、大変秀逸だ。
▲ 荒野というのは、主人公の、思春期の少女の名前だ。三部構成の、この作品の、第三部のみが、書き下ろしらしい。「ハングリー・アート」という、人を動かす衝動について、考える下りは、面白い。第一部では、ジャズや作家に対して、第三部では、さらに包括的に、この言葉の意味を問う。第三部は、表現が、少し、幻想的でもある。この年代の主人公が、人生を、どんな風に眺めるのか? こんな観点での、見所は多い。
